管理部門はトーチBY TORCH PARTNERS コラム求人を探す

採用 / 2026.09.14

求人票の明示事項チェックリスト13項目|2026年10月改正までに直すべき点

求人票は、採用活動のなかで最も見落とされやすい法令対応の現場です。

面接や労働契約書は担当者が身構えて作りますが、求人票は「前回の原稿をコピーして、募集人数と給与だけ直す」という運用になっている会社が少なくありません。ところが求人票に明示すべき事項は、2020年(受動喫煙)、2024年(業務・就業場所の変更の範囲、更新上限)と増え続けています。さらに2026年10月には、求人票の隣にある労働条件通知書にも1項目が加わります。

明示漏れは、労働局の指導の対象になりうるだけでなく、入社後の「聞いていた話と違う」の出発点にもなります。求人票の一行の不足が、採用コストを二重に払う原因になる。 これが実務でいちばん多いパターンです。

この記事では、いま何を書かなければならないのかを根拠法令とあわせて整理し、最後にそのまま使える13項目のチェックリストを付けました。


1. 前提:求人票のルールは「職業安定法」で決まっている

求人票に何を書くかは、会社の裁量ではありません。職業安定法第5条の3と、その委任を受けた職業安定法施行規則第4条の2が、募集や求人の申込みの際に明示しなければならない事項を定めています。

対象は、ハローワークへの求人申込みだけではありません。自社の採用ページ、求人媒体への掲載、人材紹介会社への求人依頼、SNSでの募集告知も含まれます。「媒体が違うから書かなくていい」ということはありません。

ここを誤解している会社は少なくありません。「ハローワークの求人票は様式が用意されているので正しく書けているが、自社サイトの募集要項は数年前のまま」という状態です。適用されるルールは、どちらも同じです。

明示すべき主な事項は次のとおりです。

# 明示事項 根拠
1 業務内容 職安法施行規則4条の2
2 契約期間(有期か無期か) 同
3 試用期間の有無と、その期間・条件 同
4 就業場所 同
5 始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩・休日 同
6 賃金(額、支払方法、締切・支払日) 同
7 加入保険(健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険) 同
8 募集者の氏名または名称 同
9 派遣労働者として雇用する場合はその旨 同
10 就業の場所における受動喫煙を防止するための措置 同(2020年4月改正で追加)
11 従事すべき業務の変更の範囲 同(2024年4月改正で追加)
12 就業場所の変更の範囲 同(2024年4月改正で追加)
13 有期労働契約を更新する場合の基準(通算契約期間・更新回数の上限を含む) 同(2024年4月改正で追加)

10〜13の4つが、比較的最近になって追加されたものです。ひな形を更新していない会社が引っかかるのは、ほぼこの4つです。


2. 受動喫煙:2020年4月から「書くこと自体」が義務です

なぜ求人票に書くことになったのか

改正健康増進法が2020年4月に全面施行され、多くの施設で屋内原則禁煙となりました。あわせて、労働安全衛生法第68条の2が、事業者に対して受動喫煙防止の措置を講じる努力義務を課しています。

この流れのなかで職業安定法施行規則が改正され、2020年4月1日から、労働者の募集や求人の申込みを行う際に「就業の場所における受動喫煙を防止するための措置に関する事項」を明示することが義務づけられました。

受動喫煙対策そのものの義務の内容は、施設の区分によって違います。しかし「自社がどう対応しているかを求人票に書くこと」は、対策の内容にかかわらず共通の義務です。ここを混同している会社が多くあります。

何を、どう書くか

厚生労働省・都道府県労働局が示す明示の例は、次のとおりです。

第一種施設(病院、診療所、学校、行政機関など)

実態 明示の例
敷地内すべて禁煙 「敷地内禁煙」
屋外に喫煙場所を設けている 「敷地内禁煙(特定屋外喫煙場所あり)」

第二種施設等(一般の事業所、多くの飲食店など)

実態 明示の例
屋内は全面禁煙 「屋内禁煙」
喫煙専用室がある 「屋内原則禁煙(喫煙専用室設置)」
加熱式たばこ専用の喫煙室がある 「屋内原則禁煙(加熱式たばこ専用喫煙室設置)」
喫煙可の宿泊室がある 「屋内原則禁煙(喫煙可の宿泊室あり)」

既存特定飲食提供施設(経過措置の対象となる既存の中小飲食店)

実態 明示の例
喫煙可能室がある 「屋内喫煙可(喫煙可能室内に限る)」
施設全体で喫煙可 「屋内喫煙可」

喫煙目的施設(たばこ販売店、シガーバーなど)

実態 明示の例
一部に喫煙目的室がある 「屋内喫煙可(喫煙目的室内に限る)」
施設全体が喫煙目的施設 「屋内喫煙可」

このほか、バス・タクシー・旅客機等では「車内禁煙」、屋外での就業では「屋外喫煙可(屋外で就業)」といった例が示されています。

実務でよく起きる3つのつまずき

① 「分煙」と書いてしまう

✕ 分煙(喫煙スペースあり)
○ 屋内原則禁煙(喫煙専用室設置)※本社・◯◯支店とも

「分煙」は厚生労働省が示す明示の例に含まれていません。喫煙専用室なのか、加熱式たばこ専用喫煙室なのか、屋外の喫煙場所なのかで、求職者にとっての意味がまったく違います。曖昧な言葉は、入社後の「聞いていた話と違う」を生みます。

② 本社の状況だけを書いて、配属先を書いていない

明示すべきは「就業の場所における」措置です。本社は屋内禁煙でも、配属先の工場や店舗に喫煙室があるなら、そこの状況を書く必要があります。複数拠点で募集する場合は、拠点ごとの状況がわかるようにしてください。

✕ 屋内禁煙
○ 本社:屋内禁煙/◯◯工場:屋内原則禁煙(喫煙専用室設置)

③ 喫煙可能区域で働く場合の年齢制限の理由を書いていない

健康増進法により、喫煙可能な区域には20歳未満の立入りが禁止されています。そのため喫煙可能区域での業務を含む求人では、下限年齢を「20歳以上」とすることができます(労働施策総合推進法施行規則第1条の3第1項第2号=他の法令により年齢制限が設けられている場合)。

同号による年齢制限は、求職者の求めに応じてその理由を示す必要があるため、実務上は求人票にあらかじめ理由を書いておくのが安全です。理由の記載がないと、求人媒体側で掲載を保留されることもあります。

○ 年齢:20歳以上(健康増進法により、喫煙可能区域へ20歳未満の立入りが
     禁止されているため)

3. 2024年4月に増えた3項目:「変更の範囲」が最大の落とし穴

2024年4月から、募集時・求人申込み時に明示すべき事項として次の3つが加わりました。

① 従事すべき業務の変更の範囲

雇入れ直後の業務だけでなく、将来的に配置転換などで変わりうる業務の範囲を書きます。

✕ 「人事労務業務全般」だけで終わっている
○ 「(雇入れ直後)給与計算・社会保険手続き
  (変更の範囲)会社の定める管理部門業務全般」

② 就業場所の変更の範囲

同じく、雇入れ直後の就業場所と、変更の可能性がある範囲を書きます。

✕ 「本社(東京都千代田区)」だけ
○ 「(雇入れ直後)本社(東京都千代田区)
  (変更の範囲)会社の定める国内の全事業所」

ここでの実務上の要点は、広く書けば安全、というものではないことです。「全国の当社事業所および出向先」と書いておけば会社の自由度は上がりますが、求職者から見れば転勤リスクが最大に見え、応募が落ちます。逆に狭く書けば応募は増えますが、後から広域配転を命じる根拠が弱くなります。

この一行は、法令対応であると同時に採用競争力の設計そのものです。 管理部門の求人では、ここを「変更なし(本社勤務)」と書ける会社が、同条件でも明確に有利になります。

書き方の実例を見たい方へ 掲載中の管理部門求人では、この「変更の範囲」がどう書かれているかを条件欄で比較できます。 → 掲載中の管理部門求人を見る

③ 更新上限の有無と内容

有期契約で募集する場合、通算契約期間の上限や更新回数の上限があるならその内容を明示します。無期転換ルール(労働契約法第18条)を意識して上限を新設・短縮する場合は、その理由を説明することが求められます。


4. 2026年10月、今度は「労働条件通知書」に1項目増えます

ここは求人票ではなく、雇入れ時の労働条件明示の話です。求人票とセットで見直さないと、募集段階と雇入れ段階のどちらかが必ず抜けます。

2026年10月1日、パートタイム・有期雇用労働法施行規則が改正され、パート・有期雇用労働者の雇入れ時の労働条件明示事項が追加されます。

追加されるのは、「(パート・有期雇用労働法)第14条第2項の規定による説明を求めることができる旨」です。

同法第14条第2項は、パート・有期雇用労働者が事業主に対して、正社員との待遇の相違の内容とその理由について説明を求めることができると定めた規定です。今回の改正は、その権利があること自体を、雇入れ時に本人へ知らせるよう求めるものです。

注意点が1つあります。 ここでいう「雇い入れたとき」には、有期労働契約の更新時も含まれると解されています。つまり、2026年10月1日より前から在籍しているパート・有期雇用労働者についても、10月1日以後に契約を更新する時点で明示が必要になります。更新のない在籍者への一律の再交付までは求められていません。

あわせて、同日付で同一労働同一賃金ガイドラインと雇用管理指針も改正されます。家族手当・住宅手当・夏季冬季休暇などについて、正社員との取扱いをどう考えるかが従来より踏み込んで示されました。この点は別稿「2026年10月、同一労働同一賃金が「静かに」変わります」で詳しく扱います。

求人票の観点で押さえるべきは1点です。 10月1日までに、労働条件通知書のひな形に「待遇の相違の説明を求めることができる」旨の記載欄を追加してください。求人票のひな形とあわせて点検するのが効率的です。


5. 自社を点検する

そのまま使えるチェックリスト(13項目)

自社の求人原稿を開いて、上から順に確認してください。1つでも「いいえ」があれば、その求人票は現行法令の明示義務を満たしていない可能性があります。

# 確認項目 判定
1 業務内容が、雇入れ直後の内容として具体的に書かれているか □
2 従事すべき業務の「変更の範囲」が書かれているか □
3 就業場所が具体的に書かれているか □
4 就業場所の「変更の範囲」が書かれているか □
5 契約期間(無期/有期の別、有期なら期間)が書かれているか □
6 有期の場合、更新の有無と更新の基準が書かれているか □
7 有期の場合、通算契約期間・更新回数の上限の有無が書かれているか □
8 試用期間の有無と、その期間・期間中の労働条件が書かれているか □
9 始業終業時刻、所定外労働の有無、休憩、休日が書かれているか □
10 賃金の額・支払方法・締切日・支払日が書かれているか。固定残業代がある場合、時間数と金額、超過分の追加支給が明記されているか □
11 加入保険(健保・厚年・雇用・労災)が書かれているか □
12 受動喫煙防止措置が、就業場所ごとに厚生労働省の明示例の言葉で書かれているか(「分煙」は明示例に含まれません) □
13 【2026年10月〜・パート有期】労働条件通知書に「待遇の相違の説明を求めることができる旨」の記載があるか □

□が1つでも残った方へ 「管理部門はトーチ」では、求人掲載時に、厚生労働省が示す明示事項の記載漏れの有無を形式的に確認しています(法令適合性を保証するものではありません)。 → 求人掲載のご案内を見る

義務ではないが、差がつく3項目

  • 変更の範囲を、必要以上に広く書いていないか(応募減の直接の原因になります)
  • 固定残業代の説明が、求職者が自分で計算できる書き方になっているか
  • 求人票の条件と、実際に交付する労働条件通知書の内容が一致しているか(明示した条件と異なる条件で契約する場合は、変更内容の明示が別途必要です)

まとめ

  • 求人票の明示事項は2020年・2024年と段階的に増えている。数年前のひな形は、ほぼ確実に不足がある
  • 受動喫煙は「対策の内容」ではなく「明示すること」が共通の義務。厚生労働省の明示例の言葉で、就業場所ごとに書く
  • 2024年追加の「変更の範囲」は、法令対応であると同時に採用競争力そのもの
  • 2026年10月の追加項目は、求人票ではなく労働条件通知書。更新時の明示も必要になる

求人票は、会社が求職者に対して最初に出す文書です。ここが整っていない会社は、それだけで「管理部門が弱い会社」に見えます。 逆に言えば、整えるだけで同条件の競合より有利になる、数少ない領域でもあります。

(求職者の側が求人票のどこを見ているかは、管理部門の「市場価値」は、何で決まっているのか をあわせてご覧ください。)


次の一歩

① 管理部門の採用をお考えの企業さまへ 「管理部門はトーチ」は、人事・総務・経理・法務・上場準備に特化した採用媒体です。掲載時に、明示事項の記載漏れの有無を形式的に確認しています。 → 求人掲載のご案内

② 求人票を整えても応募が来ない、という段階の方へ 募集条件そのものが市場とずれている可能性があります。同職種・同等級の掲載条件と比較できます。 → 掲載中の管理部門求人を見る

関連記事 ・2026年10月、同一労働同一賃金が「静かに」変わります ・管理部門の「市場価値」は、何で決まっているのか


※本記事は2026年9月時点で公表されている法令・省令および厚生労働省の公表資料に基づく一般的な解説であり、改正内容の全体を網羅するものではありません。個別の事案における法令の適用や、自社の求人票・労働条件通知書の適否については、所轄の労働局・ハローワーク、または社会保険労務士・弁護士にご確認ください。

【参考】職業安定法第5条の3、同法施行規則第4条の2/健康増進法/労働安全衛生法第68条の2/労働施策総合推進法施行規則第1条の3第1項第2号/労働契約法第18条/厚生労働省・都道府県労働局「労働条件明示の例(受動喫煙を防止するための措置)」/厚生労働省「2024年4月から、労働者の募集や職業紹介事業者への求人の申込みの際、明示しなければならない労働条件が追加されます」/パートタイム・有期雇用労働法施行規則(令和8年公布の改正省令。2026年10月1日施行)

執筆:管理部門はトーチ 編集部|運営:株式会社トーチパートナーズ(東京都千代田区紀尾井町3-12 紀尾井町ビル6F/お問い合わせ)|有料職業紹介事業 厚生労働大臣許可 13-ユ-306474。|プライバシーポリシー|広告について

当サイトの一部記事には広告(アフィリエイトリンク)を掲載することがあります。本記事に広告リンクは含まれていません。

この記事は「管理部門はトーチ」編集部が書いています。管理部門(人事・総務・経理・法務)の採用と実務について、採用する側の視点からお伝えしています。

掲載内容は 2026年9月14日 時点の情報にもとづきます。法改正等により変わることがあります。個別の判断は社会保険労務士・弁護士にご確認ください。

記事を読んだあとに、使えるもの

いずれも無料・登録不要です。診断の内容はブラウザの中だけで処理され、当社に送信されません。これらの機能は、あらかじめ定めたルール・辞書・配点表で動いており、生成AIは使用していません。