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キャリア / 2026.09.14

同一労働同一賃金 2026年10月改正|家族手当・住宅手当・夏季冬季休暇に何が起きるか

2026年10月1日、同一労働同一賃金をめぐるルールが改正されます。

対応の実務期限は、実質9月中です。 10月1日以後に雇い入れる(更新を含む)パート・有期雇用労働者から適用されるため、書式の改訂は9月末までに終わっている必要があります。

法律そのもの(パートタイム・有期雇用労働法)の条文が書き換わるわけではありません。変わるのは、施行規則と、2つの告示です。

改正されるもの 期日
パートタイム・有期雇用労働法施行規則 2026年10月1日 施行
同一労働同一賃金ガイドライン(告示) 2026年10月1日 適用
短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する指針(雇用管理指針・告示) 2026年10月1日 適用

「告示の改正」と聞くと軽く感じられるかもしれません。ガイドラインそれ自体に法的拘束力はなく、裁判所を拘束するものでもありません。しかしガイドラインは行政指導の基準であり、実務上の判断のよりどころとして広く用いられてきました。 ここが書き換わるということは、これまで「説明のつく相違」とされていたものが、通りにくくなるということです。

この記事では、何がどう変わるのか、そして10月までに何をすべきかを整理します。


1. 変更点は大きく3つ

①【施行規則改正】雇入れ時の明示事項が1つ増える(労働条件通知書の改訂が必要)

パートタイム・有期雇用労働法施行規則が改正され、パート・有期雇用労働者の雇入れ時に明示すべき事項として、

「法第14条第2項の規定による説明を求めることができる旨」

が追加されます。

法第14条第2項は、パート・有期雇用労働者が事業主に対して、正社員との待遇の相違の内容および理由について説明を求めることができると定めた規定です。権利自体は、パートタイム労働者については2015年4月から、有期雇用労働者を含めた現行法では大企業2020年4月・中小企業2021年4月からすでにあります。その権利があることを本人に知らせる義務が、今回新たに加わります。

対象範囲に注意が必要です。 法第6条第1項の「雇い入れたとき」には、有期労働契約の更新時も含まれると解されています。したがって、

  • 2026年10月1日以後に新たに雇い入れるパート・有期雇用労働者 → 明示が必要
  • 10月1日より前から在籍していて、10月1日以後に契約を更新する方 → その更新の時点で明示が必要
  • 更新のない在籍者 → 一律の再交付までは求められていない

なお、この明示義務に違反した場合は、パート・有期雇用労働法第31条により10万円以下の過料の対象となりえます。

②【ガイドライン改正】8つの待遇の扱いが踏み込んで示された

ここが本丸です。近年の裁判例を踏まえ、次の待遇について、どう考えるべきかが明確化されました。

右端の列は、自社が該当するかを確かめるための問いです。自社の記録を見に行かないと答えられないように作ってあります。

待遇 示された考え方 自社を確かめる問い
賞与 性質・目的に照らし、均衡のとれた支給が必要 賞与の算定基礎に、パート・有期を除外している理由を規程で説明できますか
退職手当 労務の対価の後払い・功労報償といった性質・目的が当てはまる場合、均衡のとれた支給が必要 退職金規程に、支給の目的が書かれていますか
無事故手当 業務の内容が同一なら、同一の支給が必要 同じ車両・同じ路線を担当する有期の方に、支給していますか
家族手当 相応に継続的な勤務が見込まれる場合、同一の支給が必要 契約更新を3回以上重ねているパートの方に、支給していますか
住宅手当 転居を伴う配置変更の有無が同一なら、同一の支給が必要 規程上の全国転勤が、過去3年で実際に発令されていますか
病気休職 相応に継続的な勤務が見込まれる場合、給与保障を含めた取扱いが必要 有期の方の休職制度は、規程にありますか
夏季冬季休暇 通常の労働者と同一の付与を行うべき 付与要件が「正社員であること」になっていませんか
褒賞 一定期間の勤続に対して付与するものなら、同一の勤続期間で同一の付与が必要 永年勤続表彰の対象に、パート・有期が入っていますか

実務への影響が最も大きいのは、家族手当・住宅手当・夏季冬季休暇の3つです。 理由は単純で、多くの会社が「正社員にだけ出している」典型例だからです。

③「正社員の人材確保のため」という説明が通りにくくなる

これは見落とされやすいのですが、影響は大きい改正です。

これまで待遇差の理由として、「正社員は基幹人材であり、その確保・定着のために手厚くしている」という説明が広く使われてきました。今回のガイドライン改正では、人材の確保・定着という目的があることのみをもって、待遇の相違が不合理でないとは言えないことが明確化されました。

不合理性の判断にあたっては、①職務の内容、②職務の内容および配置の変更の範囲、③その他の事情、が考慮されます(法第8条)。また賃金については、労働者の業績・成果・能力・経験等に応じた支給の考え方が示されています(法第10条)。待遇差についての説明や労使協議の経緯も、「その他の事情」として考慮されうると考えられます。

また、無期雇用フルタイム労働者(いわゆる限定正社員など)は同法の直接の適用対象ではありませんが、労働契約の締結・変更にあたり均衡を考慮する際には、ガイドラインの趣旨も考慮すべきとされました。「パートと有期だけ見ておけばよい」という整理は、もうできません。


2. なぜ家族手当・住宅手当が問題になるのか

この2つの手当は、同一労働同一賃金の議論のなかで最も長く争われてきた領域です。

争点は「その手当は、何に対して払っているのか」です。

  • 仕事の内容や責任に対して払っているのであれば、仕事が同じなら同じように払う必要がある
  • 生活の補助として払っているのであれば、生活実態が同じなら同じように払う必要がある

どちらの整理をとっても、「正社員だから」という理由だけでは説明がつきません。「正社員だから」は、手当の目的の説明になっていないからです。

家族手当について、今回のガイドラインは「相応に継続的な勤務が見込まれる」パート・有期雇用労働者には同一の支給が必要としました。ポイントは、判断の軸が雇用区分ではなく勤務の継続性に置かれたことです。契約更新を重ねて長く勤めているパートタイマーは、この基準に当てはまる可能性が高くなります。

住宅手当については、転居を伴う配置変更の有無が同一であれば、同一の支給が必要とされました。裏を返せば、「正社員には全国転勤があるが、パートは勤務地限定」という実態があるなら、差を設ける説明はつきます。ただし、その転勤が実態として運用されていることが前提です。

検証は簡単です。直近3年の人事異動記録から、転居を伴う異動の件数を数えてください。 規程には全国転勤と書いてあるのに発令の実績がほとんどないなら、「転勤があるから住宅手当」という説明は実態で崩れます。

夏季冬季休暇については、通常の労働者と同一の付与を行うべきとされました。所定労働日数等に応じた比例付与の余地はありますが、雇用区分のみを理由に付与しない取扱いは、説明が難しくなります。 自社の付与要件を10月までに点検しておくことをおすすめします。


3. 10月までに、何をすべきか

一般的な進め方として、次の4ステップで整理できます。

ステップ1|待遇の棚卸し(9月中)

自社の賃金・休暇制度を、正社員/無期フルタイム/有期/パートの雇用区分ごとに一覧化します。

項目|正社員|無期フルタイム|契約社員|パート
──────────────────────────────
基本給
賞与
退職金
家族手当
住宅手当
通勤手当
役職手当
無事故手当(該当業種)
褒賞・永年勤続表彰
夏季休暇
冬季休暇
病気休職(有給/無給)
慶弔休暇

差がある行に印を付けます。 これが検討対象です。

ステップ2|差がある項目ごとに「目的」を言語化する(9月〜)

印を付けた各項目について、次の3つを文章にします。

  1. この手当・休暇は、何に対して支給しているのか(性質・目的)
  2. その目的に照らしたとき、差を設ける理由は何か
  3. その理由は、実態として運用されているか

ここで「正社員の確保・定着のため」しか書けない項目は、10月以降リスクが高いと考えてください。

ステップ3|説明資料の作成(10月まで)

雇用管理指針の改正により、待遇の相違を説明する方法として次の2つが示されました。

  • 資料を活用しながら口頭で説明する
  • 短時間・有期雇用労働者が容易に理解できる内容の資料を交付する

いずれにせよ、説明用の資料を用意しておくことが前提の書きぶりになっています。「聞かれたらその場で答える」運用は、もう想定されていません。

実務的には、待遇差説明シートを1枚作っておくのが最も効率的です。項目・正社員の取扱い・パート有期の取扱い・差の理由、の4列で十分です。これがあれば、説明を求められた際に担当者によって回答がぶれることもなくなります。

その1枚を、その場で作る 待遇項目ごとに「目的」と「差の理由」を入力すると、「確保・定着のため」しか書けていない項目を洗い出し、論点の抜け漏れを形式的に整理します。無料・5分。 → 待遇差説明セルフチェックを試す ※本機能は論点の抜け漏れを形式的に整理するものであり、法令適合性の判断や法律相談ではありません。 個別の判断は社会保険労務士・弁護士にご相談ください。

ステップ4|書式の改訂(10月1日まで)

労働条件通知書に、「待遇の相違の内容および理由について説明を求めることができる」旨の記載を追加します。10月1日以後の契約更新の際にも交付が必要になる点に注意してください。

求人票側のひな形もあわせて点検を。→ 求人票の明示事項チェックリスト13項目

あわせて確認したい、雇用管理指針の追加事項

今回の指針改正では、上記以外にも次のような事項が追加・強化されています。10月を機に一度目を通しておくことをおすすめします。

  • パート・有期雇用労働者の過半数代表者の要件(管理監督者でないこと、投票等により事業主の意向に基づかずに選出されること)
  • 過半数代表者としての正当な行為を理由とする不利益取扱いの禁止(表現が強化)
  • 過半数代表者の事務に対する配慮(事務スペース・機器の提供等)
  • 福利厚生施設だけでなく、商業施設・医療機関・娯楽施設等の利用の便宜供与への配慮
  • 正社員転換制度について、複数の措置を実施し、面談やメール等で意向を確認することが望ましい
  • 転換制度の内容・実績をウェブサイト等で定期的に公表することが望ましい

最後の1点は、採用広報にそのまま効く項目です。転換実績を公表している会社は、パート・有期での応募において明確に有利になります。


4. コストと見るか、設計の機会と見るか

待遇差の是正は、多くの場合、人件費の増加を伴います。

ただ、上に揃えるだけが解ではありません。 家族手当や住宅手当のように目的の説明が難しくなっている手当については、廃止して基本給に組み替える、あるいは全雇用区分共通の制度に作り替えるという選択肢があります。実際、この10年で家族手当・住宅手当を廃止して原資を再配分した会社は少なくありません。

その際に必ず必要になるのが、原資への影響額の試算です。最低限、次の3つを出してください。

① 直接の増加額

家族手当 10,000円/月 × 対象パート 30名 × 12か月 = 年 360万円

② 社会保険料の事業主負担への波及

手当は原則として標準報酬月額に算入されます。事業主負担分(健保・厚年・子ども子育て拠出金等の合計)を概ね15%前後と見込むと、

360万円 × 約15% = 約54万円 → 合計 約414万円/年

③ 割増賃金の算定基礎への影響

家族手当・住宅手当は、支給要件によって割増賃金の算定基礎から除外できる場合とできない場合があります。扶養家族数や住宅費用に応じて算定していない一律支給は、算定基礎に含まれます。 含まれる場合、時間外単価が上昇し、①②に加えて時間外手当が増えます。

この3つを出さずに制度を動かすと、決算で驚くことになります。 逆に、この数字を出せる管理部門は、経営会議で制度改定の承認を取れます。

【不利益変更に関する注意】 すでに支給している手当を廃止・減額することは、労働条件の不利益変更にあたります。就業規則の変更による場合は、変更の合理性(労働契約法第10条)が問われます。代償措置・経過措置・労使協議の記録をそろえて進めてください。「同一労働同一賃金への対応だから」という理由だけで、不利益変更が正当化されるわけではありません。


まとめ

  • 2026年10月1日、施行規則+2つの告示が改正される。法律の条文は変わらないが、実務の判断基準は変わる
  • 雇入れ時の明示事項に「待遇の相違の説明を求めることができる旨」が追加(違反は10万円以下の過料)。有期契約の更新時も「雇い入れ」に含まれる
  • ガイドラインで、賞与・退職手当・無事故手当・家族手当・住宅手当・病気休職・夏季冬季休暇・褒賞の8つの扱いが踏み込んで示された
  • 「正社員の確保・定着のため」という理由だけでは、待遇差を正当化できないことが明確化された
  • 無期雇用フルタイム労働者との均衡にも、ガイドラインの趣旨は考慮されるべきとされた
  • 10月までにやるべきは、待遇の棚卸し → 目的の言語化 → 説明資料の作成 → 書式の改訂

同一労働同一賃金の本質は、「なぜこの差があるのかを、自社の言葉で説明できるか」に尽きます。今回の改正は、その説明の水準を一段上げるものです。


次の一歩

① 自社の待遇差説明が、10月以降も通るか点検する(無料・5分) 待遇項目ごとに「目的」と「差の理由」を入力すると、今回の改正で説明が難しくなる可能性がある項目を構造的に指摘します。 → 待遇差説明セルフチェックを試す ※法令適合性の判断や法律相談ではありません。

② 制度改定を担える人事を採用したい方へ 制度設計の実務経験がある人事は、求人市場では常に不足しています。募集要件の書き方で応募者の質が変わります。 → 管理部門はトーチ|求人掲載のご案内

関連記事 ・求人票の明示事項チェックリスト13項目 ・管理部門の「市場価値」は、何で決まっているのか


【本記事の作成方法】 厚生労働省が公表する改正資料(「パートタイム・有期雇用労働法施行規則/雇用管理指針の主な改正事項」等)にあたり、改正前後を対照したうえで人事実務の観点から再構成しています。解釈に幅のある箇所は、その旨を本文中に明記しています。

※本記事は2026年9月時点で公表されている法令・省令・告示および厚生労働省の公表資料に基づく一般的な解説であり、改正内容の全体を網羅するものではありません。個別の事案における法令の適用、自社制度の適否、不利益変更の可否については、所轄の労働局、または社会保険労務士・弁護士にご確認ください。

【参考】パートタイム・有期雇用労働法(第6条、第8条、第10条、第14条、第31条)/同法施行規則(令和8年公布の改正省令。2026年10月1日施行)/同一労働同一賃金ガイドライン(令和8年公布の改正告示。2026年10月1日適用)/短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する指針(同)/労働契約法第10条/厚生労働省「パートタイム・有期雇用労働法施行規則/雇用管理指針の主な改正事項(施行/適用期日:令和8年10月1日)」

執筆:管理部門はトーチ 編集部|運営:株式会社トーチパートナーズ(東京都千代田区紀尾井町3-12 紀尾井町ビル6F/お問い合わせ)|有料職業紹介事業 厚生労働大臣許可 13-ユ-306474。|プライバシーポリシー|広告について

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この記事は「管理部門はトーチ」編集部が書いています。管理部門(人事・総務・経理・法務)の採用と実務について、採用する側の視点からお伝えしています。

掲載内容は 2026年9月14日 時点の情報にもとづきます。法改正等により変わることがあります。個別の判断は社会保険労務士・弁護士にご確認ください。

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